「キレたくもなるでしょ。私がいなくなったから試合に出れて、晴人さんとも付き合えるって思ってるわけ?全部アンタの力じゃないじゃん」


「何を偉そうに!二股女が!!」


え?
ふ・た・ま・た……?
あ、これは完全に勘違いしているパターンだ。


「私、確かに晴人さんのことは好きだったけど、今は正義一筋で…」

「は?」

は?
晴人さんと正義と同時期に付き合っていると勘違いしていたようだが、それはない。
晴人さんとは別れた後に、正義に告白したんだ。


「…最低だね」

それまで感情を露わにしていた百瀬さんは急に冷静になり、全てを諦めたように笑った。


「あの写真、晴人さんに見せなかったの…ううん、見せられなかった。真凛のこと、心の底から嫌いになれなくて。でももう我慢ならない。見せるわよ。晴人さんにも正義先輩にも」

「写真…?」

「次のターゲットは正義先輩?そんなの絶対に許さない」

「待って、写真って?なんの、写真?」

「誤魔化せると思う?あんな風にキスしといて、友達です、って言うつもり?」

頭がついていかない。
なんのことを話しているのか少しも理解できないが、この話題は晴人さんも知らないことなのだろう。

だったら彼女の口から聞くしかない。


「…その写真、今、持ってるの?」

「持ってるに決まってるでしょ!」

鋭い視線で睨まれ、可愛い顔が台無しだと思う。
そしてそうさせているのは自分であることがいたたまれない。

携帯を取り出した彼女が、何やら操作している間、黙って待っていた。

真凛との間にトラブルが起きたものの、どこかで真凛を友達だと思う気持ちを捨てきれなかったからこそ、写真を封印してきた。
そういうことだろう。

時間が解決してくれる問題であったかもしれないのに、こうして私が関与することでまたその信頼がひとつ崩れてしまった。
どうにか元にーー


「これ」

真凛と彼女の"これから"を想像していた私は、差し出された携帯を見て唖然とした。

「これっ…」


身体の力が一気に抜ける。
地面に落ちる携帯の音を、ただぼんやりと聞いていた。






携帯の画面いっぱいに表示された写真。

真凛と裕貴が、抱きしめ合い、
口づけを交わす
その瞬間がおさめられていた。


桜塚高校の制服を着た、2人がそこにいた。