塾に行く裕貴を見送り、カフェに残る。
テーブルの上に私の分の代金も置いていってくれていた。

良い奴すぎでしょ。


「さてと…」

真凛の書いた日記を開く。
妹の心を覗いてしまったようで、心苦しい。

一度目を通したが、その時は真凛を不登校にした人物を探し出す目的で読んだ。
2回目はーー単純に正義のことが知りたいと思ったからだ。
真凛がどんな風に正義を見ていたか、本人に聞けない以上、確認するしかない。


珈琲をもう一杯注文して心を落ち着かせる。



本当に真凛が晴人さんから正義に心変わりをしていたのだとしたら、この気持ちに蓋をすべきだ。
正義はもちろん、晴人さんにも真凛にも知られてはならない。
ーーそう決意して、ブログを読み進める。
実はこっそりプリントしてきた。
プリントを広げて蛍光マーカーで正義が登場する箇所にラインを引いてみる。

こんなこと、本当はしてはならないけれど。
マーカーを引く手は止まらなかった。



⚫︎4月1日入学式
またハルと一緒に通える♡
親友の鈴木正義くんを紹介された
とても面白い人だな

⚫︎4月21日
帰り道、正義くんと会い、色々聞いてもらった
本当にいい人

⚫︎4月23日
正義くんの助言もあり、ハルに謝った
久しぶりにハルの笑顔を見た気がした
やっぱり好き


真凛の初々しい高校生活の始まり。
正義との出逢い。
晴人さんとも喧嘩したものの、順調のようだった。
5月、6月も所々正義の名前が登場したが、当たり障りのないもので、特に、気になったことはなかった。