「言わない方が良いよ。僕達がやってることは悪く言えば"犯罪"だから」


小さな声での忠告に、ハッとする。
バレたら退学、そんな簡単なことではないのかもしれはい。

成りすまし、その罪の重さを考えたことはなかった。


「この犯罪に鈴木正義を巻き込みたくないのは僕も同じだから」


「うん、そうだね。絶対に秘密にしよう」


正義の足枷になるようなことは知らない方が良い。

知っていることをーーいや、知らない。そう嘘を人ではないだろうから、悟られてはならない。



「この件はもう、解決ってことでいい?」


「うん、変なこと話してごめんね」


「大丈夫だよ。話してくれて良かった。なにがあっても僕は志真の味方だから」


裕貴に大丈夫、そう言われると本当に大丈夫な気持ちになる。


「ねぇ、裕貴。好きな人いないの?」

生徒会長で人望厚く、容姿端麗。
進学校に居ながら、成績は上位をキープしている。
生徒会と掛け持ちは、真剣に努力している部員に失礼だからと部活には所属していないが、昔からなんでも器用にこなしていた。

今年のバレンタインのチョコの数も尋常ではなかったな。