昨日はごめんなさい、そう正義に会ったらすぐに謝らないと。

しかし朝からーー香奈ちゃんと呼んでいた女子生徒と楽しそうに登校してきた正義に、言うタイミングを逃してしまった。


「ねぇ、正義。遊びに行かない?」


「良いよ」


私の横を通り過ぎて席に着いた正義はあっさり肯定の返事をした。


「やった!駅前にお洒落なお店ができたの。行っても良い?」


「了解」


席に着いた正義は欠伸をする。
そしてすぐに机に伏した正義には見えていないだろう。頬を染めて嬉しそうに微笑む美香ちゃんを。


いつものことだと、気持ちを切り替えて話しかける。


「昨日は連絡できなくてごめん」


「ん?あー、ちゃんと出ろよな」


正義が顔を上げ、やっと目が合った。
目が赤く、とても眠そうだった。


「なんか用だった?」


「勉強会の予定だったろ。ほら、早く宿題見せて」


「…また、やってないの?」


「まぁな。だから今日からは勉強付き合えよ?」


「…あの子は良いの?」


小さな声で尋ねる。
さっきの会話、私だってちゃんと聞いてたよ。


「あの子?」


「駅前のお洒落なお店がどうのって言ってたじゃない」


ああ、あのことか。と、正義は気だるそうに呟いた。


「誰も今日行くなんて言ってないし」


「……」


また机に伏した正義に、溜息が漏れた。
ああ、女の子を泣かせる男って、正義みたいな人のことを言うんだね。