ウィンドーショッピング。
限りあるお小遣いで、私たち姉妹はよく買い物に出かけた。真凛のセンスは確実で、洋服はいつも真凛に選んでもらっていた。

懐かしい日々に思いを馳せても何も変わらないことは分かっているが、立ち止まらずにはいられない。


「志真?どうした?」

「あ、うん。なんでもないの」

「真凛のこと考えてた?」


足を止めた裕貴は少し心配そうに、私の顔を覗き込む。
この至近距離には、何も感じない。
嫌でもないが、ドキドキもしない。


「ありがと。たまにね、考えちゃう。また真凛と3人で出掛けられたら良いね」


「時が経てば、きっとまた出掛けられる」


力強い言葉に頷く。
そうだよね、いつまでもこの状態が続くわけではない。




「どんな小さなことでも、なんでも僕に話して。変な奴にも絡まれてるようだし」


「…うん」


変な奴で思い浮かべる顔はひとりしかない。


「彼は真凛の好きな人と聞いてるから、そんなに邪険にできなくて」


嘘じゃない。
本当のことだ。
真凛の想い人に絡まれれば、避けたりできない。


「それでも嫌なことは嫌と言わないとダメだよ」


「そうだね」


「大丈夫なんて、強がらなくて良いからね」


ショッピングモールの片隅で、裕貴は私の肩に手を置く。


「志真の力になりたいんだ。だから、僕達の間に隠し事はなしにして」


「ありがとう」


真凛は私たちに真実を話してはくれない。

それならばせめて、私と裕貴の間には隠し事はなしにしようという彼の思いが伝わってきた。

分かってる、私は裕貴に嘘はつかない。
なにがあっても。