「はじめて裕貴に好きだと言われたのは、中学1年の冬。けれど私は同じ塾に通っていたハルに惹かれていたの。そう打ち明ければ裕貴は応援するって言ってくれた」

誰とも目を合わせず真凛は言う。


「2年生になってもやっばり同じようなことを言われたから、私もまだハルが好きだと断った。その時も裕貴は笑って引いてくれたけど、ハルと付き合えるようになったと報告した時は、顔を真っ赤にして怒ったの。それからかな。私と裕貴の間に見えない壁が存在し始めたのは」

そんな話、聞いたことがない。


「裕貴と同じ高校に通うことに不安はあったけれど、ハルと同じがどうしても良かったの。けれど案の定、裕貴が邪魔をしてきた。あのーーキス写真もそのひとつ。油断していた私が悪かったのだけど、キスされて、その現場を誰かに撮らせてたみたい。部活仲間に広められて、親友を失くしたし、嫌がらせも始まった」


「クラスからは無視されて、ハルとも上手く行かなくなった。そんな私に手を差し伸べてくれたのが正義。それでも正義にも裕貴のことは言えなかった。私が打ち明けた人々を傷付けると脅されていたからーー安藤裕貴は最低な人間なの」


「生徒会長が…」


晴人さんは呟く。

耳鳴りがする。
嘘のような話に、何も聞きたくない衝動に駆られていた。