どれくらいそうしていただろうか。

廊下に体育座りしていても、真凛は物音ひとつさせなかった。


「真凛、今までちゃんと話してこなかったよね。向き合うべきだったと思う。もっと早くに」


両親も昔から真凛には甘かった。
彼女を苦しめるようなことには触れられないはずだ。
それなら私が、ちゃんと聞くべきだった。


「真凛、お姉ちゃんと話そう」


ラーメン食べておいて良かった。
朝まで此処で張り込めそう。



「3/21、あの大雨の日、真凛は晴人さんのお兄さんのお店に行ったんだね」


とっても美味しいラーメンだった。
真凛はラーメンを食べながら、何を考えていたのだろう。






「……お姉ちゃん、ごめんなさい」


人の気配がして、意識を取り戻す。
どうやら眠ってしまったようだ。


「…真凛!?」


「例え、お姉ちゃんでも、言えないことはある」


咄嗟に真凛の腕を掴む。
そうでもしないと、彼女は逃げてしまうだろう。


元々ほっそりとした体型ではあったが、その腕はとても細く感じた。
焦点の合ってきた目で久しぶりに顔を合わせた妹を見れば、顔に生気がなく、愛らしい面影は見当たらない。

痩せたな…


「言えないこと?なんでも聞くよ!」

「…言いたくない」

真凛の目に涙が浮かぶ。


「真凛、教えて」

「……」

「貴方が好きなのは、誰?」