「離して」

「やだっ」

更に強い力で抱き締められる。

本当は心地よい。

離れたくない。


「離れたら、アンタは一生、俺と向き合ってくれない気がする」

「そんな、大袈裟だよ」

「じゃぁなんで泣いてるの?」

「…泣いてないよ」

「嘘つき」

そうだね。
沢山の嘘をついて、ごめんなさい。


「正義、大好きだよ」


重ねた嘘とは混じることのない、ただひとつの真実。

気持ちだけは誤魔化せない。


「俺も好き」

「うん」


そう答えが返ってくることが、なによりも幸せなんだよ。

けどね、
同時に同じくらい、辛くなるんだ。


私は村山志真だから。

そして正義が見ている人は、
ーー村山真凛なんだよね。