「恵美ちゃんすごいなぁ。あの難しい山場まで弾けるようになって。」



今朝も旧校舎のオルガン部屋で優月くんにきらきら星変奏曲を教えてもらっている。



優月くんが難しいと言っていたところを弾けるようになってあたしはやっとオルガンに触れることを許可されたんだ。



陸斗に近くなったような気がして、ますます頑張らなきゃなと思ってしまう。



「今日からはどこを教えよう…。」



自分の持っているきらきら星変奏曲の楽譜を見ている優月くん。



優月くんも全て曲を把握していないんだな。



モーツァルトのきらきら星変奏曲は長くて聴いていたあたしもすべて覚えられていないんだよね。



わくわくしながら優月くんを見つめているあたし。



「次、和音か。」



優月くんは楽譜を確認するとパタリと閉じてあたしに楽譜を渡してくれる。



「今日からのところも難しいんだけど、大丈夫かな?」



あたしは自分の指を見つめて少し考えてみる。



陸斗はもうこれ以上、上達することは願っていないわけだし今の状態でも十分陸斗に色を伝えることができる。