傘に入れてくれますか?

優月くんとは会わない方がいいと思っていてもピアノが上達したくてやっぱりここへ来てしまった。



昨日の誤解は解けていないままだし、やっぱりやめておこうかな?



あたしは跡を返して優月くんが待っている教室の前から去ろうとした。



――ガラッ



そのとき、教室のドアがいきなり開いて優月くんと目が合ってしまう。



「恵美ちゃん、今日はやらないの?指固くなっちゃうよ。」



ピアノを初めて優月くんの言う通りだとあたしはわかっていた。



でも、また優奈たちがこれを見ていたらと思うと怖くて仕方がない。



あたしは俯いてなにも答えられないまま優月くんの前で立ち尽くしていた。



「陸斗に聞かせてあげられなくてもいいの?今、怖がって辞めたら陸斗に届けられなくなるよ。」



優月くんの言葉があたしの心に突き刺さった。