傘に入れてくれますか?

ありがたいことに優月くんが渡してくれた楽譜には指の番号と音符の読み方が書き記されていた。



「ねえ、恵美ちゃん。スマホ貸して。」



優月くんに言われ、あたしは優月くんにスマホを渡した。



優月くんはあたしのスマホになにかのアプリをインストールしているみたいで…



「恵美ちゃん。インストールまで時間が少しかかるから指に覚えさせておいて。」



優月くんに言われた通りあたしは近くの机に座り、楽譜に書かれた指の番号通り練習をし始めた。



あたしの指の動きは硬くて、なかなか全て成功しない。



やがて、アプリのインストールが終わり優月くんからスマホが返ってくる。



「これだといつでも練習ができるから。昼休みでも頑張って。」



そう言って優月くんはオルガンに近寄って行こうとする。



優月くんの練習が始まる前に質問することはしておかないとと思いあたしの頭は混乱する。



「あのっ、指がなかなか動かなくて…。どうすれば…」



言葉がうまく出てこなくて、あたしの声はどんどん小さくなっていく。



優月くんに届いたかわからなくてあたしは俯いた。



「指か…。俺もピアノやり始めたときは恵美ちゃんと同じだったよ。毎日動かしてると柔らかくなるから。鍵盤を叩くときは卵を持っていると思ってね。卵を落とさないように。」