「恵美…。」


ガラス張りの図書室に入り、陸斗へ近づいて行くと陸斗は驚いた顔であたしを見る。


「今来るとは思ってなかった。レッドカードだな。」


「レッドカードってなにさ。授業に出てない陸斗もレッドカードでしょ。」


他愛のない会話だけど、すごくこの時間が幸せに感じる。レッドカード出されちゃったけどね。


「オレはいいんだよ。オレはさ…。授業よりやらなきゃならないことがあるんだ。」


透き通った空を見上げながら遠い目をする陸斗に思わずドキリとする。


それって、もしかして…。


「今日なら色のある世界が見える気がしたんだ。でも、見えなかった。オレには一
生モノクロの世界で生きろってことだよな。」


空を見上げたまま悲しそうに笑う陸斗に胸が苦しくなる。


「そんなことないよ。あたしだけは色がついてるんでしょ?陸斗もいつか見えるようになるよ。美沙も優奈も、美雨も彩乃も…、クラスの皆も。全部、全部見えるようになるよ。」


涙ですべてが歪んで見える。すべてが白く見える。


「そうなったらいいよな。でも、原因もわからないんだ。原因がわからなければ、治療方法もわからない。オレは恵美だけ見えればいい。」