傘に入れてくれますか?

でも、あたしの心はなぜかスッキリしない。


昨日はあたしが間違っていなければ、北条があたしへ律儀にお辞儀をして去って行ったはず。


実沙のゲームの話とは繋がっていないような気がするんだよ。


「旭さん…。あの、」


あたしの隣の席に座っている茶髪と赤めがねが特徴の男子が一つのメモをあたしに渡してくる。


もう入学して2か月が過ぎようとしているのにクラスメイトの全員の名前を覚えられていないあたしはなんなのだろうか。


そんなことを心の中で思いながらあたしはメモを受け取った。


シャーペンで描いては消してを繰り返したようなボロボロの小さなメモ。


これは男子からに違いないな。


あたしに手紙なんか送ってくるような男子はただ一人しかいない。


陸斗だ。汚い紙とは反対に無駄に綺麗な陸斗の字に少し苛ついて笑いがこぼれてしまう。


「アスメグのダーリンから?」


「みっ、美雨。ダーリンはやめてよね。まだ、ただの友達だよ。」


美雨が横から覗いて来るのであたしは作り笑いで誤魔化した。