傘に入れてくれますか?

あんな本を見ていて色の見えない陸斗はどう思うのかな。


陸斗は色が見えないということを考えるだけで何故か泣きたくなるほど悲しい。
でも、あたしは泣かないんだ。


あたしが泣いたところで陸斗の世界に色が戻るわけではないから絶対に泣かないんだ。


「そういえば実沙、今日はやけに機嫌いいんじゃない?なにかいいことあったの?」


あたしの右横でノートを片手に今日の予習をしていた彩乃が言う。


「そうかなぁ。でも、北条に勝ったんだ。」


実沙がニコニコと言う。


勝ったってどういうこと?


あたしは覚えている限りの昨日の記憶を探る。


実沙の記憶…。美沙の記憶…。


たしか、昨日実沙はなにかで北条と言い合っていた。


声を荒げて怒鳴り散らす実沙の姿を思い出す。


でも、なにについて北条と言い合っていたのかが思い出せない。


それさえわかれば、すべてが繋がるはずなのに…。


「北条とテレビゲームをして、勝ったんだぁ。久しぶりに勝ったから嬉しかった。」


なんだ、ゲームで勝ったから機嫌がいいのか。美沙も安易単純なんだな。