よくよく考えてみると陸斗の言う通りだ。


モノクロの世界でも変わらないものは沢山ある。だから陸斗は何も苦労はしていないんだ。


「あー。でも、もう一度だけ色のついた世界が見てみたいな。そしたらいい絵がもっと、描くことができるはずなのにさ。」


これが陸斗の本音なのかな?やっぱりモノクロの世界はつまらないのかな?


「ごめんな、恵美には関係ない話。恵美は気にしなくていい。恵美だけは色がついて見えるから。それだけでいいんだ。」


独り言のように言い聞かせている陸斗。


あたしの耳にはその言葉が必死に満足させようとしているものにしか聞こえないんだけどな…。


「ねえ、陸斗。あたしのこの傘、何色に見える?何色の蝶がついている?」


こんなことで陸斗の気持ちなんてわかるわけがない。陸斗は色がない世界にいるのだからこんなのイジワルな質問に決まってる。


けど、このオレンジの蝶のシルエットがついた傘に気づいてほしかった。あたしの色に気づいてほしかった。


「見えなくてもわかるぞ、恵美の傘の色なんて。オレンジだろ。」


正解だ。陸斗はあたしのことをちゃんと見ている。


でも。でも、あたしが他の色を選んでいたら陸斗はわかっていただろうか。あたしのメンバーカラーがオレンジだって情報がなかったら陸斗は気づいていただろうか。