そう言ってあたしは陸斗が描いたオリジナルのイエローカードを破いた。


カードは雨に濡れているからものすごく破りやすくて…


脆く敗れてしまったイエローカードは通行人に踏みつぶされてすぐに泥まみれになってしまう。


「ごめん。恵美はイエローカードって言ってるけどオレには黄色自体が見えてないんだ。色鉛筆の字を見ただけだからその黄色がどんな黄色かわからない。」


陸斗の言葉を聞くたびに悲しくなってどうしていいかわからない。


神様、お願いです。陸斗にもあたしと同じ世界を見せてあげてください。輝いた世界を見せてあげてください。


陸斗のことを置いてあたしはもう一度大雨が降っている外へ出て空に祈った。


強く、ただ強く。あたしは空に、雨に祈った。


陸斗に色のついた世界を見せてあげたくて強く祈った。


「恵美、バカなことしても無駄だ。そろそろ帰ろう。」


陸斗のなにも気にしていないような声が聞こえ、あたしはただうなずいた。


「そんなにショックだったのか?」


「うん…。」


「恵美が気にしても仕方ないだろ。星空は真っ黒だからオレも恵美と同じように見えるし雨だって透明だから同じだ。」