またここに来てしまったよ…。


この前、雨に濡れているあたしを陸斗が見つけてくれたデパートのショーウィンドウの前。


沢山の傘があたしの前を行き交っている。


傘はちゃんと手元にあるのに差さずにいるあたしはきっと変だよね。


でも、このまま差さないでここで待っているとまた陸斗があたしを見つけてくれるって思うんだ。


冷たい雨の中、あたしの頬を伝う悲しみの涙は暖かくて優しいな。


不思議だよね。悲しいときの涙も、悔しいときの涙も、嬉しいときの涙も、全て温度は同じなんだもん。


陸斗とあのとき一緒に食べたクレープも美味しかったな。


あたし、あんな美味しいクレープ食べたことなかったよ。


陸斗との短い思い出に浸りながら、雨と一緒にあたしは涙を流す。


寒い…。身体か冷えてきちゃったよ。


陸斗のことを諦めてそろそろ帰ろう。


あたしはそう思い、傘を開こうとした。


「恵美、なに勝手に諦めてるんだよ。恵美が傘を差したらわからなくなるじゃねぇかよ。イエローカード」