「マジかよ。もうあの野郎来るっていうの?」


「ごっ、ごめん。俺にも止められなかった…。」


放課後、陸斗のいる旧校舎のあの部屋に行く途中で聞いてしまった実沙の大人びた北条を叱る声。


本当に美沙はわがままだなぁ…。


そんなことを思いながら美沙たちの横をただ通り過ぎたかった。


でも、


「小瀬っちが、早く会いたいらしくて…。」


「反対。2年になってからにしなさいって言って来い。まだ美雨と合わせるのは早い。今会ったとしてどうするの。あのバカ」


多分、あたしには関係ない話なのだろうけれど何について言い合っているのかすごく気になる。


ただの修羅場ではなさそうだ。


「実沙、声でかいよ。恵美ちゃんが聞いてるよ。」


北条が咄嗟に言った一言で美沙はハッとしたようにあたしの隠れている方向を見る。


「メグミ、ごめん。」


美沙はそれだけ言い残すと逃げるように下駄箱へと走り去って行った。