傘に入れてくれますか?

「恵美、こんなに喜んでくれてありがとな。でも、もうオレにはこんな絵描けないんだ。」


どうして陸斗はそんなことを言うのだろうか。まだまだ描き続けてよ。描いてあたしを笑顔にしてよ。今始まったばかりじゃない?


そんな言葉を掛けてあげたいのだけど、陸斗の悲しそうな瞳を見たら言えなくなってしまう。


止まったはずの涙さえも伝ってきてしまう。


あたしの涙を見て陸斗は驚いて近づいてくる。


「ごめんな。さっきの言葉は取り消す。だから泣くなって。」


陸斗は言葉を反省してあたしに謝っている。


あたしも早く泣くのを辞めないと。


「どうして…あんなこと…言ったの?」


震える声を絞り出し、陸斗に言う。


「どうしてだろうな。スランプってやつかな?最近いいものが浮かばなくてさ。絵を描くのも辞めようと思ってたんだ。でも、恵美のあの笑顔見てどうしてだろうって。オレの誰にもわからないような絵を見てあんなに興奮してくれて」


陸斗のムリヤリ作った笑顔に胸が痛む。


「あたし、手伝うよ。陸斗のためになにができるかわからない。でも、手伝う。だから、次の絵は最高なものにしよう。」


あたしの信用のない言葉に陸斗はうなずく。


「そうだな。このキャンバスに最高の絵を描くことにする。」


陸斗の決意とあたしの決意。そして、それを見守ってくれる陸斗の描いた絵が自然と笑っているように見えた。