正直、陸斗の傘なんかに入りたくはない。


でも今のあたしには多分、拒否権なんかないんだ。


だからあたしは陸斗にただ黙ってついて行く。


「中に入ってないで突っ立て失恋でもしたのか?」


陸斗はあたしが傘を差さずにあそこにいたことを問ってくる。


「まあ、そんなとこ。」


あたしに好きな男なんていない。


もちろん、陸斗もあたしの好きな男なんて知るはずもない。


「そっか。」


陸斗はあたしのウソに付き合ってくれているのか、あまり深くは問ってこなかった。


「家まで送るよ。傘ないんだろ?」


「いいよ、そんなの。」


「どうせ近いんだし、ついでだよ。」


そっか、陸斗とあたし家近いんだった。


あたしに拒否権なんて本当にないことを感じてだた、陸斗と傘の中で寄り添う。