傘に入れてくれますか?

「優奈ちゃん、ごめん。もう楽譜は持ち込まないでほしい。」



秋梨くんの目には微かに涙が浮かんでいた。



秋梨くんは本当はうちのリクエストした曲を演奏するのが嫌なのかな?辛いのかな?



それとも…



まだ、旭のことを気にしているのかな?



「優奈ちゃん、そろそろ帰ろう。月も出始めた頃だし。」



秋梨くんの指さす窓に視線を向けると月が輝き始めるころだった。



「そうだね。」



うちはオルガンの譜面台から楽譜をサッと回収して鞄の中へしまう。



「優奈ちゃんちょっと待って。その楽譜、少しの間だけ貸してくれるかな?できる
だけ、練習してみるから。」



秋梨くんがそう言うんだったらただ単純に楽譜が難しいだけだったんだ。



そのことに少し安心する。



「わかった。じゃあ、コンビニよってコピーして行くから少し付き合ってくれる?」



さっき、微かに見えたような秋梨くんの涙は嘘だったかのように消えていて秋梨くんは何もなかったかのように振る舞う。



うちの気にしすぎだったかな?



「ほら、グズグズしてないでさっさと行くぞ。置いてくぞ。」