傘に入れてくれますか?

陸斗はあたしが塗った色を指さしてどれを使ったのか聞いてくる。



陸斗のために色鉛筆の番号を振っておけばよかったな。



さっきまで恥ずかしくてたまらなかったはずなのに、今は陸斗のためを思っている自分が本当に不思議だ。



「えっと、ちょっと待ってね。」



裏にメモしておいたものと塗ってある色を見比べる。



「藍色だから…、これだ‼。」



あたしは陸斗に色鉛筆を渡した。



「ふーん。」



あれ、さっきまで陸斗は興味を持ってくれていたのに色鉛筆を渡したらつまらなさそうな表情になっちゃった。



やっぱり、色のない世界は陸斗にとってつまらないのかな?



「じゃあ、これは?」



陸斗は表情を戻し、ほかの色を指さした。



「これだよ。」



あたしが色鉛筆を陸斗に渡すとやっぱり興味のなさそうな表情をする。



「待ってくれ。今、メモするから。」



陸斗はそう言って胸ポケットにいつも入れているボールペンでなにも塗られていない絵に色鉛筆の番号を付けていく。



やがて全ての色を確認し終え、時刻は午後7時でもう家に帰らないと心配されてしまう。