傘に入れてくれますか?

こんなの陸斗に見せられるわけがないよ。



陸斗はあたしが付けた色を見たら腹を抱えて笑うだろう。



「恵美、できたか?」



絵の下書きを終えた感じの陸斗の足音がこちらに向かって近づいてくる。



あたしは咄嗟に塗り終えた絵を座っていた椅子の下へ隠した。



「恵美?」



陸斗があたしのいる部屋を覗いてくる。



「なっ、なんでしょうか?」



「塗り終えた?」



陸斗の瞳はあたしがこれからつくウソを見抜いてしまうようでもう逃げられないと思った。



「あっ、うん…。」



「できたならさっさとこっちによこせ。」



できたはできたのだけど、あまりにも不思議な世界すぎて笑われてしまう。



それがどうしても怖くてなかなか渡すことができない。



「大丈夫、笑わないから安心しろ。オレ、色の区別ができないんだし。」



陸斗は色の区別ができない。だから大丈夫。



そう自分に何度も言い聞かせて震える手で陸斗に色を塗り終えた絵を渡した。



どんな言葉が返ってくるのかすごくドキドキしてしまう。



「恵美、これはどの色鉛筆を使ったんだ?」