傘に入れてくれますか?

「疲れただろう。恵美、しばらくそこで寝てろ。」



陸斗はそう言って部屋に置かれているソファを指さした。



部屋の雰囲気からしてここはあたしの知っている陸斗の部屋ではなさそうだ。



でも、どこの誰かもわからない部屋で寝るなんてできるわけがない。



「大丈夫だよ。ここはオレの新しいアトリエだ。恵美の寝顔に全く興味ねぇし。」



陸斗はそう言い残してあたしを置いて部屋を出て行ってしまった。



本当にあたしはここへなにをしに連れて来られたのだろうか。



どうしても陸斗のやりだすことが気になるので陸斗の出て行ったドアを覗いてみよう。



廊下の向こうには陸斗の姿はなくなっていて、一つの部屋だけに明かりが灯っているのが見える。



あの部屋に陸斗はいるんだよね。



陸斗は『絶対に見るな‼』とはあたしに言っていないし覗いても大丈夫かな。



そもそも、あたしが寝るのも寝ないのも自由なんだしいいよね。



陸斗に見つからぬよう、空いているドアの隙間からそっと様子をうかがう。



部屋は描きかけのデッサンの紙が散らかっていてどれだけ陸斗が失敗したのかがわかる。