ほらね。優奈のテンションが下がってしまった。



でも、今のあたしの口から出る言葉はこんな言葉しかないんだ。



こんな自分が本当に嫌だ。



優奈の気分をどうにかして上げないといけない。



頭の中で考えれば考えるほど真っ白になっていってしまう。



「片倉、その楽譜見せてくれ。」



あたしの後ろにいた陸斗が優奈に話しかけたので驚いた。



「あっ、うん。でも多分、知らない曲だよ。」



絵を描くことにしか興味がない陸斗が楽譜を見てもわかる訳がない。



わかる訳がないのにどうしてそんなに真面目な顔で楽譜を見ているんだろう。



「ユヅだったらこれくらい弾けないわけない。片倉、楽しんで来いよ。」



あたしが下げてしまった優奈のテンションは陸斗の言葉で元通り。



優奈は陸斗の言葉を聞いて嬉しそうにしながら軽い足取りで旧校舎に向かって行く。



陸斗に助けられちゃったな。



ありがとうと陸斗を見上げ心の中でそっと呟いてみた。



でも、陸斗はあたしの気持ちとは反対に怒り気味で…。



「恵美…」



なにを言われるんだろう…。