疑問だらけのあたしの言葉を聞く前に陸斗はさっさとあたしを連れて教室を出てしまう。



陸斗がなにも持っていない今のあたしといてもどうにもならないのにどうしてだろう。



陸斗の表情は晴れ晴れとしていて楽しそうだから不思議だ。



「旭、またね。」



陸斗に手を引かれながら、下駄箱へ向かっている途中で旧校舎のオルガン部屋に行くところだった優奈が笑って挨拶をしてくれる。



優奈が今日、優月くんの演奏を楽しみにしている姿を見ると胸がチクリと痛んでしまう。



でも、これもいつかは慣れるんだろうな。



「優奈、今から優月くんのところ行くの?」



優奈の楽しそうな笑顔を壊さないためできるだけ平然を装って、無理やり笑顔を浮かべる。



どうか、陸斗には見えていませんように。



「そう、家にピアノの楽譜があったからどんな曲か聞いてみたいなって思って。」



嬉しそうに話している優奈が眩しすぎる。



「ゆ、づきくん。初めて見た楽譜。弾けるかな。」



言葉が詰まる。



こんなこと言ったら優奈のテンションが下がってしまうことはわかってる。



「だよね。聴けるまで時間かかっちゃうかも。」