多分、優月くんのピアノを聴きに行くのだろう。
あたしはもう、あの部屋に出入りすることができない。
優月くんに気軽に近づける優奈がいいなと思ってしまう。
「恵美はどうするの?」
彩乃があたしの予定を聞いてきたので少し戸惑ってしまう。
あたしには行き場がない。
「アスメグ、もし予定がないなら一緒にいこ?」
美雨が無邪気な笑顔をあたしに向けてくれるのだけど…。
皆には言ったことはないのだけど、あたしは和菓子があまり得意ではないんだ。
あたしの好みを置いといて彩乃たちについて行くか、独りの放課後を過ごすかも2択。
「恵美はオレと色鉛筆買いに行く予定があるんだよ。」
あたしの斜め後ろの上から聞こえてきた聞きなれた声に救われる。
「陸斗。あた…」
あたし、そんな約束した覚えないんだけど。それに、色鉛筆なら2日前に買ったじゃん。
そう言いたかった口は陸斗の大きな手でふさがれていた。
「いいからそういうことにしておけよ。どうせ暇なんだろ。」
あたしにしか聞こえないくらいの声で陸斗は呟いた。
たしかに暇だけど、あたしをキープしてどうするのだろう。



