でも今は、今だけは泣いてる姿を見せたくないんだ。



あたしは黙って女子トイレに駆け込み鍵を閉めた。



いくらもう使われていない旧校舎だとはいえ、トイレはまだ使えるので陸斗は入ってこないよね?



あたしの指はまだ震えている。



いつになったらこの震えは止まるのだろうか。



涙はすっかり納まったのに指の震えは止まらない。



みんな心配してるからそろそろ戻らないと…。



戻って優月くんに相談しよう。優月くんだったらなにか解決策を知っていそう。



細かく震える手でトイレの鍵を開け出て行く。



「恵美」



気が付いたらあたしは陸斗に強く抱きしめられていた。



よほど心配してくれてたんだな…。



あたしも陸斗の背中に手を添えようとする。



でも、あまり力が入らなかった。



「恵美、その手の震えどうした。」



陸斗にはすぐわかってしまうんだね。



「ちょっと緊張しちゃって…」



どうしてなのか本当はわからない。



わかることはこれだけなんだ。



「いいから戻るぞ。」



陸斗があたしの手を力強く引いてくれる。



それがどうしてか、とてつもなくあたしを安心させるんだ。