傘に入れてくれますか?

陸斗はあたしに渡した合鍵の存在を忘れていたのかそんなボケたことを言う。



「違う、こっちだよ。」



でも、陸斗が触っていた者は鍵ではなくてあたしが鍵に付けていたオレンジ色の星形のストラップ。



そういえば、このストラップあたしが中学の時机に入れられてたんだよな…。



何組の誰があたしの机に入れた物なのかわからなかったので持ち主を探すこともできずそのまま自分の物にしたんだ。



「これ、もしかして…。陸斗の物だったの?」



なんだか申し訳なくなって急いで陸斗に返そうとする。



「恵美、逃げるんだもんなぁ。そのときさ、初めてオレが恵美にしてきたことが悪いことだったって気づいたよ。」



陸斗はあたしが中学2年の頃あたしをいじめていた男子だったことを思い出す。



ずっとわからなかったことが今、解けた気がした。



「色がない世界で恵美を見つけて、恵美と同じ色を持つこのストラップを見つけた。恵美ならオレの世界に色を宿すことができると思って…。」



そっか。陸斗はずっと前からあたしのことを想っていてくれていたんだ。



「でも、もう恵美すら色づいて見えなくなってしまった。手遅れだな。鍵、戻してくる」



後悔の残るような声を残して旧校舎の奥へと姿を消していく陸斗を見つめて思った。



まだ、手遅れじゃない。



あたしが、あたしのピアノが陸斗の世界に色を取り戻すんだ。