傘に入れてくれますか?

相変わらずなにもないな…。



初めてここに来た時から思っていたこと。



ていうか、物が前より減ったような気もするな…。



最近、陸斗はここを出て行こうとしているのか整理を一生懸命していた。



前まではあったキャンバスは一つもなくなっていて、棚にしまっていた額に入れられた絵もなくなっているし。



沢山しまってあった絵具を入れている棚にも赤・青・黄それから白、最低限の色しかなくなっている。



やっぱり、陸斗はここから出て行こうとしてるんだ…。



予感はしていたことなのに、悔しくて涙がこみ上げてくる。



陸斗、お願い。あたしの前からいなくならないで…。



「恵美?」



空耳だよね。こんなときに陸斗の優しい声を思い出すなんて本当に嫌になる。



「優等生が授業をサボってどうするんだよ。」



あれ…?しっかり陸斗の声が聞こえる。



幻か確認するために前を向くとはっきりと見えたんだ。



不思議そうな顔をしている陸斗の姿が…



やっと、あたしのこと見てくれた…。



あたしがモノトーンに見えると言ったあの日から陸斗はあたしを見てくれなくなっていた。すれ違っていた。



でも、今は陸斗が真っすぐとあたしを見てくれている。



「陸斗、あのね...。これ、ずっと返そうと思ってたの。」



鍵を返すとしたら今しかないと思い、制服のポケットに入れていた鍵を取り出して陸斗に渡す。



「これ、まだ持ってたのか…。」



「持ってないと陸斗の来る前に入ることもできないじゃない。」