傘に入れてくれますか?

無邪気に笑っている陸斗がとても愛おしくて。



あたしは後から自分のスマホで流した音楽を確認した。



悪魔と呼ばれているアーティストのロックの曲でとても恥ずかしい。



あたしは普段、こんな音楽とか聴かないのに…。



でも、陸斗に短調を聴かれるよりはあたしの流した恥ずかしい音楽を聴かれた方がずっといい。



短調のフレーズが終わり、長調の音に戻る。



あたしは陸斗の耳からイヤホンを外していつもの席に座った。



陸斗はこれから絵の色を付けていくらしく、絵具の準備を始める。



今日はどんな色を見せてくれるのかとても楽しみであたしは胸を高鳴らせながら絵具の文字を見比べている陸斗を見ていた。



陸斗の下書きを見ると、なにかの街の風景のようだ。



建物の色をあたしは想像しているけれど、昼なのか夜なのかは下書きだけではよくわからない。



それから、色のある世界にいるあたしの世界とモノトーンの世界にいる陸斗の世界では色遣いが違う。



陸斗はよく『あたしの色』と言ってオレンジ色で色をつけるけど、今日はオレンジ色を持っていない。



暗い色の絵具をたくさん手にしている陸斗。



陸斗が手にしている明るい色の絵具はたった一つで…。



可愛らしいピンクの絵具。



陸斗はなにを思って暗い色の絵具とピンクの色の絵具を持っているのだろう。



予想がつかない絵。そして、予想ができない陸斗の感情、心境。