傘に入れてくれますか?

彩乃は音楽のことも日頃勉強しているのか、弾いてほしい曲を言った。



「メヌエット、いい曲だよね。俺も好きだよ。」



優月くんは彩乃にそう言ってメヌエットという曲を演奏し始める。



曲の初めだけでわかってしまう。



タイトルは知らなかったけれど、あたしもこの曲を知っている。



メヌエットは本当に心が落ち着く曲であたしも好きだった曲だ。



でも、曲が終わったと思いあたしが拍手をしようとすると優月くんは息を大きく吸ってまた弾き始める。



少し暗いイメージのメロディーを。



まだ音の違いはわからないけれど、長調から短調に変わったことはなんとなくわかる。



隣の部屋には陸斗がいる。



陸斗は、隣の部屋で独り、なにをしているのだろう。



あたしが大きな音を立ててこの部屋を出て行けば、目立ってしまう。



でも、いても経ってもいられずあたしは椅子から立ち上がり猛ダッシュで陸斗のいる隣の部屋に駆け込んだ。



陸斗は幸いにも筆を手に持ちながら眠っていた。



今日の授業難しかったもんね。



絵もまだ、下書き状態で今度はどんな世界を見せてくれるのか少し楽しみに感じる。