ギラつく太陽に目を細めながら遠くの入道雲を眺めてた。
高校2年の夏、彼女と出会った。

転校してきた彼女は自己紹介を済ませ、先生に指定された俺の隣の席に座った。
近くで見た彼女の髪は細くて綺麗だった。
幼さが少し残る、綺麗な顔立ちだった。
俺はそんな彼女に挨拶すら出来なかった。相変わらずそっぽを向いて、遠くの入道雲を眺めてた。

いきなり自分の隣に女が来たことに、落ち着かなく、そして、緊張した。
そのせいで日直だった俺はホームルームの挨拶を忘れていた。

「外のでかい雲がソフトクリームに、みえるのか?」

先生にからかわれ、周りは笑っていた。
居心地の良い笑い声に、俺は緊張が解けた。
彼女もクスクスと笑っていた。
そんな笑顔を見た俺は、気づいたら肩に力が入っていた。

彼女は笑って少し緊張が解けたのだろうか

「名取ちよです!よろしくね!」
俯きながら言った。

「進藤りょうた。よろしく。」
下を見ながらぶっきら棒に言った。



カーテンの隙間から木漏れ日が差し込む。暑いはずなのに睡魔に襲われた。


授業終了のチャイムに目が覚め、隣に座ってるちよを見て現実に引き戻された。
「前の学校ではどんな感じだったの?」
咄嗟に出た質問だったが、ちよが答える間も無く周りに女が集まって来た。
同じような質問に答えるちよの言葉に耳を傾けた。
改めて聞くちよの声は細くてもよく聞こえる。
男女ともに人気があったということがよくわかる。

次第に恋愛の話になっていった。
俺は恋愛などよくわからなくて、恥ずかしくて、無意味にトイレへ向かった。

放課後の教室は真っ赤な夕暮れで、オレンジ色に染まっている。
ひぐらしの鳴き声が心地良い。
ちよの周りには沢山の人が集まっている。左右に揺れ動く影を見るだけでも楽しそうなのがよくわかる。

そんな楽しそうな雰囲気に、ポツリと一人でいるのが虚しくて、教室を出た。