言葉を伝え終わり、数秒経っても宮野くんは何の反応も示さない。


やはり名前を教えられていないのに勝手に呼んだり、自惚れるつもりがなかったけれどあんな発言したりしてしまったのが不快だったのだろうか。


そう考えを至らせると申し訳ない気持ちになり、眉を下げて宮野くんの顔を覗き込むように視線を移してみれば彼は顔を真っ赤にして口元を手の平で覆っていた。



「うれし、やべ…っちょー、うれしっ…絶対拒否られると思っちゃってたから…」



私と視線が重なるや否や、目を反射的に顔を逸らして喋る宮野くん。


その姿を目にして本当に可愛いなあ、と素直に思った。


さっき照れ臭そうに頭を掻いていた時も可愛いとは思ったけれど。


純粋な反応をする彼に自然と頬が緩み小さく、ふふ、と笑みを零せば宮野くんは口元から手を退けて私の手をぎゅうと握る。





「だあああっ、天野さんまじでかわいい!やっぱり今日は天野さんが俺のアドレスをテイクアウトするんじゃなくて俺が天野さんをテイクアウトします!」





そして、そう勢い良く大声で叫んだ瞬間。


宮野くんは私達のやり取りを黙って見ていた友達に、「調子に乗るな!」と後頭部を思い切り叩かれ、有無を云わせぬまま外へと引き摺られて行ってしまった。