小雪ちゃんはさらに近づいて来た父に近くにあった座イスを投げると俺に手を伸ばした。



「雪村くん!今のうち!行こう!」



え?行く?



「何ボケっとしてんの!早く!」


真剣な目。


いつもの小雪ちゃんとは全然違う。


俺を女だってずっと間違えてたくらいばかで。

いつも適当にニコニコしてぼーっとしてるだけかと思ってたのに。



俺は小雪ちゃんの小さな手を握った。



きゅっと握り返してくる手。



小さいけど確かに温もりはあって。



俺は昔からこの手が欲しかったのかもしれない。


差し伸べてくれて。



握ったら握り返してくれる手が。



「待て!」

起き上がってこようとする父に近くにあったパーカーを顔に投げつけ小雪ちゃんと手を繋いだまんま家を飛び出した。