川瀬さんからはごめんしか聞いたことがない。



「いや、こっちこそ」


我に帰って俺は川瀬さんを離す。



「ダメって分かっててもやってみなきゃわかんないから」



川瀬さんはそれだけ言うとまた来た道を走り出した。


はぁ。とベンチに座って川瀬さんの後ろ姿を見送る。

一心不乱に走ってて。後ろを振り返りさえしない。


今流行りの失恋がテーマのクリスマスソングが流れる。



それが俺と重なって聞こえて。





頬に温かいものを感じた。