川瀬さんは困ったように、でもうんって言って笑った。
またあいつのこと、考えてたのかな。
クリスマスツリーの前で待つ。
俺には待つことしか出来ない。
5時58分。
約束の時間まであと2分。
周りはカップルだらけで一人はかなり目立つ。
でもそんなこと気にしてられない。
見つけた。
小さいけどすぐに見つけられる。
あの赤いマフラーは。
「ごめんね、遅れた!」
はぁはぁと肩で息をする川瀬さん。
来てくれた。
「川瀬さん、」
伝えようとしていた思いを川瀬さんに止められる。
「ごめん!私どうしても伝えなきゃいけない人がいて。ほんとにごめんね」

