やっと一日が終わったぁ!
そう思って帰る準備しているとなぜかニコニコの環奈。
「みーおっ!」
「なに?どしたの?」
「ううん、今日も可愛い可愛い美央ちゃんは遅刻したなーって思って!」
「もうっ、明日は絶対しないもん!」
「ほんとかなー?」
ーーキーンコーンカーンコーンーー
「帰んなきゃ。先生見回りきちゃうし。」
「そーだね。私迎えだから!」
「そっか!じゃあ、また明日ね!」
「うん、バイバーイ」
そう言って思いっきり手を降る環奈の方がよっぽど可愛いと思うけど。
そう思いながら手を振り返す。

すぐ近くにある家に何十分もかけて帰る。
これは朝ゆっくりできない分帰りはゆっくりしようと毎回思うから。

家に着き、鍵を開けようとしてふと気づいた。
「あれ…鍵…開いてる」
朝閉め忘れたっけな?
でも、閉めたはず。
ビクビクしながらもドアを開け中を確認する。
リビングからはテレビの音が聞こえる。
玄関には男物と思われる靴がある。
お父さん…?
そんなわけないか…。
じゃあ、誰?
リビングの扉を開くとそこにいたのは…
「な、なんで風見くんがここにいるんですか!」
そう、あの風見優がうちのリビングのソファーでくつろいでいたのです。
「んあ?…あぁお帰り。」
「え、ただいま………じゃなくってなんでいるんですか!」
と聞けば彼はぼそっと
「…ボディーガード」
と答えた。
あぁ、そう言えばお母さんが朝言ってたっけ?
でも、高校生とか聞いてないし!
「でも、なんで風見くんなんですか!?」
そう聞くと風見くんはムスッとした顔で
「…俺じゃ不満なの?…」
なんて聞くから可愛くて、そりゃあもう可愛くて可愛くて、不覚にもキュンとしてしまった。
「い、いやそう言う事じゃなくて…その、風見くんも高校生なのに…ボディーガードとか申し訳ないなっていうかなんていうか……」
そう、風見くんにだって予定はあるはずだ。
それをうちの都合でどうこうしていいはずがない。
「俺の親も転勤で引越し。お前の親と一緒に。同じ会社なの」
「は、はぁ。」
「んで、お前はこっちに残ってる笠原さん家の娘さんのボディーガードを住み込みで見ろって言われておいて行かれたわけ。」
そっか、風見くんの親も転勤なのか……………。
あれ?さっき住み込みとか言わなかった?
「あ、あの〜、風見くんはうちに住み込みでボディーガードを?」
「あぁ」
「そっか……………………え、えぇぇぇ!?」
「俺といるのそんなに嫌?」
「うっ……い、嫌じゃないよ?」
私は彼のいじけた顔に弱いらしい。
「じゃ、よろしくね?」
「あっ、まって!うち、部屋1つしかない…」
私の家は父と母と弟は居間で雑魚寝するためわたし用の部屋しか用意されていない。
「じゃ、同じ部屋ってことで。よろしく」
「んなっ、ちょっ、待ってって。」
そんな私の言葉に耳を傾けることもなく彼は部屋へと向かっていった。
「あっ、美央!」
「はい」
「タメ口でな?あと、飯作れるか?」
「う、うん。」
「よし。」
そう言って私を見つめてくる風見くん。
私に何か伝えようとしてるのだろうか。
「な、なに?」
「お腹空いた」
作れということですね。
「ちょっとまってて」
「うん!」
そう言って嬉しそうにする風見くんは子猫みたいに可愛かった。

「……やばい、何もない。」
冷蔵庫には少しの野菜とひき肉。それしか残されていなかった。
「ハンバーグ、できるかな?」
玉ねぎ切るの嫌いなんだよねー。

ー5分後ー
うぅー、目が痛い。涙が止まらない。
だから玉ねぎは嫌いなのー
風見くんはなにか嫌いなものあるのかな?
ハンバーグ美味しいって言ってくれるかな?
またあの嬉しそうな顔してくれたらいいな。
そう言えば風見くんと話したの初めてだな。
あんなふうに喋るんだな。
これから一緒に暮らすんだよねー。
学校とか何て言うんだろう。
やっぱりバレないように家もバラバラに出るよねー?
ーサクッー
「っ!!!いったぁ。」
指切っちゃった。
絆創膏……部屋だ
ートントンー
「入っていい?」
「おう」
ーがチャー
絆創膏、あれ?どこだっけ?
「っ!!美央、血が…早くこっち来て。」
「え?う、うん」
そう言って絆創膏を取り出して私の指に巻いてくれる。
あっ、手大きいな。
「はい、できた」
「ありがとう」
風見くんにはこんな優しい一面もあったんだな。
「…なんで怪我した?」
「玉ねぎ切ってたんだけど、、風見くんのこと考えてたらちょっとね」
そう言うと風見くんはうつむいてしまった。
「風見くん?」
顔が赤いのがわかる。
「熱あるの?」
「ない」
「なら良かった。」
「うん。…あのさ、」
「ん?」
「優って呼んで?」
な、ななななんですか。その首を傾げて、天使みたいな顔で見つめられたら…あぁほらまただ。ドキドキが止まらない。
「美央、呼んでくれないの?」
「え、あっあぁ、呼ぶよ。…優くん。」
「やだ。優!」
「ゆ、優」
「そ!せーかい」
嬉しそうな顔で私の頭をなでてくるからなんだか私まで嬉しくなってきちゃう。
「ご飯作ってくるね」
私が優のそばを離れて部屋の外に出ようとした時
「美央…」
「なに?」
振り向いた瞬間頭を撫でられて。
彼の顔を見て、私は心臓が飛び跳ねた。
だって優はすごく優しい顔で微笑みながゆっくりと私の頭を撫でる。
ドキドキしないわけがない。
「ど、どーしたの?」
緊張を隠しながら聞いてみる。
「ううん、ただ触れたくなっただけ。」
「そっか。」
優も寂しいのかな?親と会えなくなったわけだし。
人肌が恋しくなっても仕方ないか。
「頭くらいならいつでも触りたくなったときに触っていいよ。」
「うん。…美央」
「ん?」
「お腹空いた。」
ほんと緊張感のない人だな。
「はいはい。」
また嬉しそうな顔をした。