「笠原さん、俺と付き合ってください。」
空き教室に入ってすぐに私は告白された。
急すぎてかなり驚いたけど、でも私の中で答えは出ていた。だって、私が好きなのか優だもん。他の人を好きになることはできない。
「…ごめん、わたし渡辺くんとは付き合えない。」
「っ!!……………そっか、ごめんね。」
「うん、ごめんね。」
その瞬間彼の眼つきが変わった。

ーガターンー

渡辺くんが机を思いっきり蹴っ飛ばして近づいてきた。
逃げようにも私より渡辺くんのほうがドアから近い。
豹変した渡辺くんに私はただ立っていることしかできなくて。
「ねぇ、笠原さん」
「な、なに」
涙目になりながらも必死に答える
「気もないのになんで俺に関わってきたんだよ!」
「ご、ごめんなさ…い」
「っざけんなよ。俺の気持ち弄んでたんだろ!どーせ腹の中ではいつも笑ってたんだろ!」
「そんなこと…ない」
「るせーよ!!」
そう言って手を振り上げる渡辺くん
やばいと思ったときには遅かった。
思いっきり振り下ろされた腕から逃げることはできずその腕は私の頬を正確に仕留めていった。
今まで感じたこともない痛みに必死に耐えながら渡辺くんを睨みつける。
「なんだよ!その目はよぉ!!」
また殴られる。そう思い目を閉じたのにいつまでたっても痛みは襲ってこなかった。
不思議に思い目を開けるとそこには怒りのこもった目をした優が渡辺くんの腕を抑え立っていた。
「ゆ…う…」
優は私の声が聞こえていないのか、ずっと渡辺くんを睨んだままだ。
「俺の女に触れるな」
「うるせぇ、美央は俺のだ。」
「気安く名前呼んでんじゃねぇ!」
優は急に怒鳴り声をあげたかとおもえば、渡辺くんの胸ぐらをつかみ1発溝に蹴りを入れたあと
「美央に土下座しろ」
と低い声で言った。
渡辺くんは土下座というよりも倒れ込むように私の足元に座り込み「ごめん、許してくれ」と言って逃げていった。
私は目の前から渡辺くんが消えたことで一気に緊張が解けへなへなと床に座りこんだ。
「美央…ごめんな、助けてやれなくて」
「ううん、助けてくれてありがとう」
そう言って微笑むと優は私の頬に手を当てて
「ごめん、ごめん」
ずっとそう繰り返していた。