「起きろ」
「起きてる」
「ご飯」
「後で」
私の朝はいつもこの会話で始まる。
いつもと同じ時間に起きて、いつものように部屋でのんびりしてたのに…。
その平和な時間は母の言葉によって消し去られた。
「あぁ、今日だから。引越し。」
「そ。………は?」
え、今なんて?引越しって言いました?お母様
「お父さんの転勤決まってって、この前話したわよね?そしたらあんたここに残るって。」
「お、覚えてないです…。」
「ったく、こんな大事なことをあんたって子は…。」
「え、だって。」
「お金は仕送りする。それに半年に1回くらいは帰ってくるから安心しなさい。」
「いや、待ってよ、。」
「じゃ、そーゆーことだから。遅刻しないように学校行きなさいねー」
そう言うと母は荷物を業者に渡し、家を出ていった。
笠原美央17歳、なぜか突然ひとり暮らしが始まりました。
ーーガチャーー
「あっ、そう言えば今日からあんたにイケメンボディーガードつくから安心して暮らしなさいね〜」
それだけ言い残して母は再び去っていった。
「はぁぁ!?」
私の怒りはMAXに到達しそうだったけれど遅刻という言葉が頭を過り怒りは焦りに変わった。
「やばい!今日だけは遅刻できない〜」
慌てて家を飛び出し全速力で学校に向かう。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴ってる。鳴り終わるまでに教室に入らなきゃ!
ーーガラガラガラーー
「セ、セーフ?」
「アウトだ笠原」
「な、なんで〜!お願い先生!」
こういう時に限って担任の山田は許してくれない。
「美央、諦めな〜」
「か、環奈まで〜。」
みんなには笑われるし、環奈にまで諦めろとか言われるし。今日はツイてない。
私が席につくのと同時にHRが始まる。
今日も後ろから視線を感じる。
あっ、逸した。2年目ともなると視線を逸したかどうかまでわかるようになる。
彼の眼力は人一倍強い。
そして一匹狼。
彼と目が合ったら殺される。
みんなからそんな噂を流されていた彼だが今はだんだんとその噂も消えつつある。
「笠原美央、」
「はい」
「風見優、」
「はい」
そう。後ろからの視線はこの風見優君からのものなのです。
うちの学年にはか行の名字の人が私達二人しかいないため、同じクラスになればいつも前後の席。
だからこの視線にも慣れっこ。