すると、黒い傘が頭上に翳された。

「濱崎?何してるんだ?」

身長190センチ近くの大男。
体育の氷上先生は、いつもの気難しい顔で私を覗き込む。
その迫力で生徒には恐れられているが、私は入学してからずっと淡い恋心を抱いていた。

「……ひっ、氷上先生、なんでここに」
「研修があったんだよ。こんな雨の中帰る気か。傘ぐらい貸してやるのに」
「あ、す、すいません」

はっと服を見ると、白いシャツも、バケツの水を被ったかのような状態で……下着が映っていた。

ひゃああ……!
先生も、心なしか視線をそらしたように見える。

「……タオル貸してやる。ついてこい」

氷上先生は、珍しくスーツを着ていた。いつもはジャージなのに、いつもと違う。

それに……あれだけ生徒がいても、私の名前を知ってくれてるんだな。
帰宅部で目立たない私のことを。

黒い傘で、氷上先生と相合傘。
居残りになってよかった……なんて思っちゃう。