その国にはいつから伝わったのかわからない古い古いお話があります。


雲一つない青空の、風が気持ちいい日には海辺のどこからか美しい歌声とクスクスと軽やかな笑い声がするのです。


その声の持ち主を見ようとした人々はたくさんいましたが、結局は誰もその人を捕まえることはできませんでした。


ただ、後ろ姿を見た人が言うには、そこには美しい海色をした髪をした人とその傍らに寄り添うように淡い光があったそうです。


今でも時たま、美しい声が海の近くでは聞こえます。その声を聞いたものは幸せになると言われています。





これは1人の美しい尾びれを持った人と、1人の妖精のお話です。