「先輩、昨日泣いてましたね」


その私の素直さを、ナギ君は受け取ってくれなかった。


ニヤリと口角を上げて、年下とは思えない色気を漂わせる。


「さ、さあ?」


「なんで泣いてたんですか。
なに?僕があの子のチョコを受け取ると思ったからですか?」


なぜか楽しそうにナギ君が問いかけてくるけれど、私にはそんな余裕がない。


「ちょ、ちょちょちょっとまって。
なんでこっち近づいてくんの⁉︎」


ナギ君が、一歩、一歩と私に近づいてくる。


「チエ先輩、なにテンパってるんですか。
僕のこと好きなんでしょ?
近づけて嬉しいでしょ?」


なんだこいつ⁉︎誰だこいつ⁉︎


「ナギ君、キャラ変わってるから!」


「これが僕の素ですけど?
いつもとなにもなわらない平常運転です」


そう言いながらも距離は縮まって、二人の間はもう数十センチ。


動けば触れてしまいそうで、心臓が破裂しそうなくらいに打つ。