「わっ……、和真、」
「おはよ、寝坊助」
そう言って、クシャリと髪を乱してくる。
和真、湯宮和真(ユミヤ カズマ)は。
わたしの、小学校からの幼なじみ。
と、いっても。
和真は卒業と同時に、引っ越して、西中に通っていたから。
中学生活の三年間は、会ってなかったんだけど。
「ネボスケじゃないもん。まだ八時だし。和真よりも早く来てるじゃん」
「いや、俺のほうが早いよ」
「え?」
「だって俺、練習してたし」
ふわあ、と。無防備にあくび。
体重を預けるみたく、わたしに、もたれかかってくる。
部活の朝練習で、疲れてるのはわかるけど。
「重いよ……」
「頑張って支えて」
「むり。てか、バスケ部、まだ朝練あったんだ?」
「んー」
「テスト近いのに。休みじゃないんだね」
「まあな。練習しないと上手くなんないし」
そうは言いつつ。
一年からレギュラーになってたの。知ってる。
「ほんで? 楓は何してんのさ」
「ひぇ?」
さらりと。
本題にもどされて、変な声が出るわたしを笑う和真。
でも、貼ってあったそれを見つけた途端。
いぶかしげな表情に、変わった。
「なにこれ」
「わあああ!」
いとも簡単に剥がしちゃう和真。
あーあー、もう!
なんでそんなペリペリと!
ペースを乱されたわたしは、大パニック。
いや、それよりも。
「や、だ! 見ないでよ!」
「なに。見られたらまずいもんなの?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「いや、まじで、なにこれ」
と、手に取っただけじゃなく。
中身を開けようとしてくるものだから。
わたしはいよいよ、顔が真っ赤になる。
見られたらまずい。
まだ、そうだとは、決まってないけど。
もしそれが、本当に。
ラブレターだったとしたら……。
「だからっ……今それを、」
「おっと」
「っ確かめようと、」
「ふはっ、ジャンプ力結構あんのな」
「して、」
「ほれほれ」
「~~もうっ! いじわるしないでよ!」
ぴょんっ、ぴょんっ、と。
みっともなく飛び上がって手紙を返してもらおうとするわたしと。
手紙を持つ手を、ひらひらと高く上げる和真。
和真だって、他の男子と比べたら、そんなに高くないくせに!
「まあ、こんな場所に貼ってあるんだから、ラブレターだよな、多分」
「……っ」
「……見られたらまずい?」
「そ、ういうわけじゃないけど……」
「けど……?」
「もし、本当にそうだったら、可哀そうでしょ、その人……」
「…………」
昨日までは、確かになかった手紙。
きっと、わたしが帰ったあと。
誰もいない昇降口で、こっそり入れられたんだとおもう。
そこまでして、何か、伝えたかったんだとしたら。
わたし以外には、見てほしくないはずだから。
なぜか、ため息をついた和真。
「ほい」
「え……?」
「返す」
「え、え?」
「別に、誰かまでは興味ないし」
それなら最初から返して欲しかった……。
手をおろして、手紙をわたす和真。
だけど。
「お前、妙なとこで心配性だもんな」
「え?」
「…………」
「……和真?」
「まあいいや。……んじゃ、お先」
和真は、それ以上なにも言わずに。
さっさと靴を履き替えて。
そのまま廊下の向こうへと、消えていった。
受け取ったときに向けられた。
その目が、なにを伝えたかったのか。
分からなかったわたしには。
その背中を、見送ることしかできなかった。
「おはよ、寝坊助」
そう言って、クシャリと髪を乱してくる。
和真、湯宮和真(ユミヤ カズマ)は。
わたしの、小学校からの幼なじみ。
と、いっても。
和真は卒業と同時に、引っ越して、西中に通っていたから。
中学生活の三年間は、会ってなかったんだけど。
「ネボスケじゃないもん。まだ八時だし。和真よりも早く来てるじゃん」
「いや、俺のほうが早いよ」
「え?」
「だって俺、練習してたし」
ふわあ、と。無防備にあくび。
体重を預けるみたく、わたしに、もたれかかってくる。
部活の朝練習で、疲れてるのはわかるけど。
「重いよ……」
「頑張って支えて」
「むり。てか、バスケ部、まだ朝練あったんだ?」
「んー」
「テスト近いのに。休みじゃないんだね」
「まあな。練習しないと上手くなんないし」
そうは言いつつ。
一年からレギュラーになってたの。知ってる。
「ほんで? 楓は何してんのさ」
「ひぇ?」
さらりと。
本題にもどされて、変な声が出るわたしを笑う和真。
でも、貼ってあったそれを見つけた途端。
いぶかしげな表情に、変わった。
「なにこれ」
「わあああ!」
いとも簡単に剥がしちゃう和真。
あーあー、もう!
なんでそんなペリペリと!
ペースを乱されたわたしは、大パニック。
いや、それよりも。
「や、だ! 見ないでよ!」
「なに。見られたらまずいもんなの?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「いや、まじで、なにこれ」
と、手に取っただけじゃなく。
中身を開けようとしてくるものだから。
わたしはいよいよ、顔が真っ赤になる。
見られたらまずい。
まだ、そうだとは、決まってないけど。
もしそれが、本当に。
ラブレターだったとしたら……。
「だからっ……今それを、」
「おっと」
「っ確かめようと、」
「ふはっ、ジャンプ力結構あんのな」
「して、」
「ほれほれ」
「~~もうっ! いじわるしないでよ!」
ぴょんっ、ぴょんっ、と。
みっともなく飛び上がって手紙を返してもらおうとするわたしと。
手紙を持つ手を、ひらひらと高く上げる和真。
和真だって、他の男子と比べたら、そんなに高くないくせに!
「まあ、こんな場所に貼ってあるんだから、ラブレターだよな、多分」
「……っ」
「……見られたらまずい?」
「そ、ういうわけじゃないけど……」
「けど……?」
「もし、本当にそうだったら、可哀そうでしょ、その人……」
「…………」
昨日までは、確かになかった手紙。
きっと、わたしが帰ったあと。
誰もいない昇降口で、こっそり入れられたんだとおもう。
そこまでして、何か、伝えたかったんだとしたら。
わたし以外には、見てほしくないはずだから。
なぜか、ため息をついた和真。
「ほい」
「え……?」
「返す」
「え、え?」
「別に、誰かまでは興味ないし」
それなら最初から返して欲しかった……。
手をおろして、手紙をわたす和真。
だけど。
「お前、妙なとこで心配性だもんな」
「え?」
「…………」
「……和真?」
「まあいいや。……んじゃ、お先」
和真は、それ以上なにも言わずに。
さっさと靴を履き替えて。
そのまま廊下の向こうへと、消えていった。
受け取ったときに向けられた。
その目が、なにを伝えたかったのか。
分からなかったわたしには。
その背中を、見送ることしかできなかった。
