4/28 -サクラソウ- 花のような君に贈る想い

途中脱線した打ち合わせは、それでも最後には和と田上が真剣な話をして締めくくられた。

石川は装丁デザインからの参加なので本当はここに居なくてもいいのだが、今日はその後の約束のために和を呼んでいるのだ。


次の打ち合わせが控えているという田上が先に出ると、和は少し疲れた顔を引き締める。

「では、石川さん、お願いします」
「はい。ちょっと待っててね」

テーブルの上の荷物を綺麗に片付けて待機していると、1人の男が入ってくる。

「お疲れ様です」
「…お疲れ様です」

低い声が、戸惑い気味に部屋に響く。

「座ってください」

笑顔を作った和に、男は微妙に嫌な顔をして扉を振り返った。

「石川さんには許可を頂いております」
「…そういうことか」

諦めたように座った男は、石川のデザイン事務所のデザイナーだ。

石川と並ぶと身長は低めだが、体躯がしっかりしている。
ブルーのシャツから伸びた腕は、くっきりと筋張って触らなくても筋肉があるのがわかる。

「宮前さん、この間のお話、考えてくださいましたか」
「お断りしたはずですが」
「そこをどうにか」

和が背筋を伸ばして、頭を下げる。

「…以前も申し上げましたが、忙しくてプライベートでまで作品を手伝う余裕はありません。それも、内容もなにもかも内緒で、注文どおりのイラストだけ欲しいだなんて無茶な話です」