4/28 -サクラソウ- 花のような君に贈る想い

コーヒーが手元に届き、ようやく3人全員が揃ったところでようやく打ち合わせ開始だ。

タブレットに表示されたプロットに気がついて、田上が和につまらなそうな目を向ける。


「なんでボツか、分かるよな」

ふざけていても、遅刻までも、女癖が悪くても、仕事はできる男だ。
無精ひげの生えた肉食めいた顔が、ため息をついてそらされる。


「今回はミステリー作家、本崎 和也の新境地であり、人気デザイナー石川 直弥とのタイアップで話題性もある。それがこんなんで言い訳ねえだろうが」

吐き捨てられた言葉に、和はふて腐れたように言い返す。

「だから、新境地っていう売り文句でいきたいなら、群像劇とかでもいいですよね?今ストックしてるやつ、あれまだ掲載決まってないならそれの装丁をお願いするとか」

「石川と組みたいなら恋愛物だ。それ以外はうちでは出版しない」

そう言われると作家的には弱い。

もともと、本崎和也あらため、崎本 和がデビューした出版社は田上のところではない。
しかし、デビュー前から田上には世話になっていたこともあり、そこそこ名前が売れてきたこともあり声をかけてもらったのだ。

本当は田上のところで本を出したかった和にとっては、願ってもない話なのだ。

しかも、装丁は大好きなデザイナーである石川直哉とくれば尚更だ。


一気に苦悩の表情で眉間に皺を寄せた和に、田上が笑いながら鞄を探った。