「それくらいのやる気を、この仕事でも見せてくれると有難いんだけどね」
にっこりと笑顔で差し出されたのは、昨日ボツをくらったプロットが表示されたタブレットだ。
「…お待たせしていて申し訳ありません」
「まあ、こっちとしては別にいいから、形式上だけ受け取っておいて。田上さんも時間かけるって言ってるし。でも、全然身が入ってないとなればさすがに一言くらいはね」
タブレットに表示されたプロットは、ここ最近で一番甘ったるい展開を綴った恋愛小説だ。
いや、なるはずだったものだ。
「あれ、そういえばコーヒー遅いね」
いつもならばすぐに運ばれてくるコーヒーが来ない。
不思議に思った石川が立ち上がったところで、部屋の扉が豪快に開いた。
「今日は俺が持ってきた特性ブレンドだ」
そう言って入ってきたのが、打ち合わせ参加者最後の1人である田上だ。
肉食っぽい顔をした白髪交じりの中年で、遅刻の常習犯で、和の今回の編集者だ。
「田上さん、何してるんですか…」
得意げな顔をした田上の背後で、困ったように頭を下げている女性社員がいる。
(可哀相に、給湯室に突撃されたんだろうな…)
和はぼんやりとそんなことを思いながら、立ち上がってその社員からトレイごとコーヒーを受け取る。
「あ、本崎先生っ、」
「いいですよ。頂きますので、仕事に戻ってください」
「なんだお前、優しいじゃねえか」
「田上さんも、いいから早く座ってください」
にべもない言い方をしても、田上は楽しそうにするだけだ。
にっこりと笑顔で差し出されたのは、昨日ボツをくらったプロットが表示されたタブレットだ。
「…お待たせしていて申し訳ありません」
「まあ、こっちとしては別にいいから、形式上だけ受け取っておいて。田上さんも時間かけるって言ってるし。でも、全然身が入ってないとなればさすがに一言くらいはね」
タブレットに表示されたプロットは、ここ最近で一番甘ったるい展開を綴った恋愛小説だ。
いや、なるはずだったものだ。
「あれ、そういえばコーヒー遅いね」
いつもならばすぐに運ばれてくるコーヒーが来ない。
不思議に思った石川が立ち上がったところで、部屋の扉が豪快に開いた。
「今日は俺が持ってきた特性ブレンドだ」
そう言って入ってきたのが、打ち合わせ参加者最後の1人である田上だ。
肉食っぽい顔をした白髪交じりの中年で、遅刻の常習犯で、和の今回の編集者だ。
「田上さん、何してるんですか…」
得意げな顔をした田上の背後で、困ったように頭を下げている女性社員がいる。
(可哀相に、給湯室に突撃されたんだろうな…)
和はぼんやりとそんなことを思いながら、立ち上がってその社員からトレイごとコーヒーを受け取る。
「あ、本崎先生っ、」
「いいですよ。頂きますので、仕事に戻ってください」
「なんだお前、優しいじゃねえか」
「田上さんも、いいから早く座ってください」
にべもない言い方をしても、田上は楽しそうにするだけだ。

