「…宮前さん、なんでここにいるんですか」
「先輩に聞いた」
そういうことじゃなくて、と思ったが、それも知りたかったことなので和はひとつ頷く。
が、そういうことではない。
「あの、」
「もう、泣かないのか」
急に言われて、和は思わず目を丸くした。
「えっと」
「会いたかったんだろ。それなら、そう言えばいいんだ。泣くほど好きなら、そう言って泣くのが普通なんだ。それを、目をそらして笑ってるから、」
「そらしてなんかっ」
言葉を遮られて驚いている宮前から、和は唇を噛んで目をそらした。
「…そらしてなんか、いません」
「お前がそうやって逃げるから、周りの人間は"若いんだから次に行け"って言いたくなるんだよ」
ココアを持つ手に力が入る。
「どこにも行ってほしくないなら、そう言えばいいんだ。嫌なら嫌で、辛いなら辛いで、言わなきゃ人には伝わらないんだ。それなのにそうやって無理やり笑うから、周りは気を使って、お前が前を向けるようにいろんなことを言いたくなる」
お前に何が分かるんだと、投げつけたいくらいの凶暴な気持ちが沸き立つけれど、ここは春佳の部屋だ。
この畳も、テーブルも、山吹色のパーカーも。
喉が熱くて、苦しくて、それ以上はもう、我慢ができない。
「だって!…っ、て、どこに行っても、ハルカ君はもう、」
ココアに涙が落ちる。それが何かの、合図になった。
「先輩に聞いた」
そういうことじゃなくて、と思ったが、それも知りたかったことなので和はひとつ頷く。
が、そういうことではない。
「あの、」
「もう、泣かないのか」
急に言われて、和は思わず目を丸くした。
「えっと」
「会いたかったんだろ。それなら、そう言えばいいんだ。泣くほど好きなら、そう言って泣くのが普通なんだ。それを、目をそらして笑ってるから、」
「そらしてなんかっ」
言葉を遮られて驚いている宮前から、和は唇を噛んで目をそらした。
「…そらしてなんか、いません」
「お前がそうやって逃げるから、周りの人間は"若いんだから次に行け"って言いたくなるんだよ」
ココアを持つ手に力が入る。
「どこにも行ってほしくないなら、そう言えばいいんだ。嫌なら嫌で、辛いなら辛いで、言わなきゃ人には伝わらないんだ。それなのにそうやって無理やり笑うから、周りは気を使って、お前が前を向けるようにいろんなことを言いたくなる」
お前に何が分かるんだと、投げつけたいくらいの凶暴な気持ちが沸き立つけれど、ここは春佳の部屋だ。
この畳も、テーブルも、山吹色のパーカーも。
喉が熱くて、苦しくて、それ以上はもう、我慢ができない。
「だって!…っ、て、どこに行っても、ハルカ君はもう、」
ココアに涙が落ちる。それが何かの、合図になった。

