和が目を覚ますと、畳と花の香りがした。
体にかかっているあたたかい物が布団だということに気がついて、辺りを見回すと知っている和室だということに気がついた。
「…百恵さん?」
「あっ、和ちゃん!目覚めた?」
テーブルに突っ伏すように寝ていた百恵に声をかけると、驚いた顔から優しく目を細めた。
「ああ、まだ寝てて。大分冷えてたから、もう少しあったまって。何か持ってくるわね」
百恵がそう言って慌てたように出て行く。
少し暑いくらいだと思って上体を起こすと、見たことのある山吹色のパーカーを羽織っていた。
「…ハルカ君の匂いがする」
いつだったか、勝手に着て怒られたことがある。
化粧もしていなければ香水もつけていないのに、「なんか和の匂いがつくから」と言って少し照れていた顔が嬉しくて、わざと薄着で遊びにきて、服を借りるようなことをしたこともある。
春佳の部屋にいると、懐かしい記憶がなにもしなくても浮かんでくる。
「平気そうだな」
てっきり百恵が戻ってくるかと思っていたら、湯気のたつコップを持って入ってきたのは宮前1人だった。
「…あ、」
そこでようやく、ここで寝ている経緯を和は思い出した。
「これ、花野さんから。体しんどいとかは?」
受け取ったコップには温かいココアが入っていて、甘い香りに少しほっとする。
「いえ、大丈夫です。…すみません、ご迷惑を」
「いいから」

