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この胸騒ぎがなんなのか、宮前自身にも分からなかった。
和が出て行ったあと、酷い雨だったことを思い出して慌てて追いかけた。
元々送っていくつもりで酒は飲んでいなかった。
通りに出て、和がタクシーに乗り込んだところだった。
それならそれでいいと思ったのに、タクシーが都市高速に乗るのをみて変な胸騒ぎがした。
石川に連絡をして教えてもらった霊園は、暗くて車も停まっていない。
砂利の駐車場を雨が打ち付けて泥が跳ねる。
「宮前!」
「あ…先輩っ」
車を降りて霊園の奥に入ろうとしたところで、タクシーから石川が傘をさして降りてきた。
「こっちだ」
石川についていくと、静かな霊園の中に佇む、白っぽい姿が見える。
傘すら差していない白い春ニットの背中は、さっきまで向かい合っていた和のもので、膝をついて泣き崩れている姿に、安堵よりも先に宮前は息を呑んだ。
「あ、おい、宮前!」
春佳の墓の前で泣く和の姿に、石川は思わず足を止めていた。しかし、その横を宮前がすり抜けていく。
その瞬間、和の体が揺らいだ。
「崎本!」
倒れこんだ和を抱き起こすと、びしょ濡れの服から出ている腕がひどく冷たかった。

